Nara BLOG

病気の知識、対策、予防法等書いています。基本的に難しい内容を噛み砕いてわかりやすく要約した内容になっています。

認知症の行動・心理症状とその支援について。

みなさんこんにちわ、奈良岡です。

今日は

認知症になってしまった方の行動の変化と、向き合い方について

という内容でまとめていきます。

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「尊厳をもって最期まで自分らしくありたい。」

 

これは誰もが望むことですが、この願いをはばみ、深刻な問題になっているのが「認知症」です。

いまや老後の最大の不安となり、超高齢化社会をつき進む日本にとって最重要課題の1つともいえます。

 

 

*中核症状についてはこちら

認知症の3つの症状-中核症状について - Nara BLOG

*診断・治療についてはこちら

認知症の診断・治療について - Nara BLOG

 

 

行動・心理症状の変化

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記憶障害などの症状がもととなり、本人の性格や素質、周囲の環境や人間関係などが影響して出現する症状を「行動・心理症状(BPSD)」と呼びます。

 

 

 

 

1.元気がなく、引っ込み思案になることがあります。

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自信を失い、すべてが面倒に

 

・周囲が気づく前から、本人は何かおかしいと気がついています。

 

・これまでテキパキできた料理も手順が悪く、時間がかかるうえに、上手くできなくなります。

→「味が違う」「おいしくない」等と言われ、自信を失います。客には出前をとり、毎日の食事も出来合いのお惣菜ですますようになります。

 

・家の整理、整頓や掃除もできなくなります。

→片付けるつもりが散らかって収集がつかなくなり、室内はごちゃごちゃ、大事なものは見つからなくなってしまうことになります。

 

・意欲や気力が減退したように見えます。

うつ病とよく間違われます。

→周囲からだらしなくなったと思われることもあります。

 

・すべてが面倒になり、以前はおもしろかったことでも、興味がわかないという状態がでてきます。

 

 

 

将来の望みを失ってうつ状態になる場合もあります。

 

・能力の低下を強く自覚し、密かに認知症に関する本で調べたりしている人もいます。自ら認知症を疑って将来に望みをなくす、うつ状態になることもあります。

本人に恥をかかせないよう、自信をなくすような言葉はさけ、本人の尊厳を傷つけるようなことがないようにすることが重要なサポートです。

 

・「できることをやってもらう」ことは必要ですが、できたはずのことができなくなっているという体験は、本人が自信をなくす結果になって逆効果です。

自分の能力が低下してしまったことを再認識させてしまってはますます自信を失われせます。

それとなく手助けをして、成功体験に結びつける支援が重要です。

 

 

 

 

2.身の回りの動作に支障がでてきます。

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認知症が進行すると、入浴、更衣、排泄、食事など、基本的な生活動作に援助が必要となります。

 

<排泄の失敗を例に>

排泄の失敗は、本人にとっても非常にショッキングな出来事です。失敗の原因は、いろいろあることを理解しておくことが必要です。

まわりの対応で本人のプライドを傷つけずにすみます。

 

 

トイレの場所がわからなくなります

 

場所の見当識障害。はじめは夜間だけですが、その後日中でもわからなくなります。

トレイの場所をわかりやすく、風呂場、玄関のたたきなど、トイレと間違えやすい場所のドアを隠す。夜間は、廊下の明かりをつけておく、トイレの明かりをつけドアを開けっ放しておくといった対応が考えられます。

 

 

 

衣類の着脱に手間取って汚してしまうことが起こります

 

脳血管性認知症で運動障害がある場合、アルツハイマー認知症で更衣がうまく出来なくなっている場合など

脱ぎ着に時間がかからない衣服で着慣れているものにします。

 

 

 

尿意、便意を感じにくくなります

排尿、排便の周期を観察し、定期的なトイレの誘導で対応できます。

*排泄の失敗には前立腺肥大や膀胱炎など、身体の病気が原因のこともあります。本人が痛みなどの身体の異常を感じにくくなるということもあります。周囲の人はこの視点からも気にかかる必要があります。

 

 

 

 

3.周囲の人が疲弊するもの盗られ妄想

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しまい忘れをきっかけに、妄想が起きます

 

大事なものをしまい忘れる

いつもと違う場所に預金通帳をしまいこみ、そのことを忘れる。

 

 

自立心が強い性格、心ならずも家族に迷惑をかけている状況

人に頼らず、自立して生きてきたという気持ちから、自分が忘れるわけなどない(忘れたことを受け入れられない)という思いが現れる。

 

 

もの盗られ妄想

「通帳がない!」そばで世話をしてくれている人が盗んだ!と言う

 

なくし物が出てくればそれでおさまる妄想ですが、周囲の人はあまり深刻にならず、疑われている介護者が疲弊しないよう、心理的な支援をすることが大事です。こういう妄想は、時期が来れば自然に見られなくなります。

 

 

 

もの盗られ妄想がより複雑な妄想になることもあります

 

・妄想的になりやすい素質を持った人にストレスがかかった時に、単純なもの盗られ妄想から「家の財産を狙っている」とか「家を乗っ取られる」といった妄想に発展します。

これには「妄想的になりやすい」という素質が深く関与している場合がありますので、妄想を治療する抗精神病薬が効果を上げることが少なくありません。

単純なもの盗られ妄想にしては、訴えがオーバーだったり、執拗だったりするときは、妄想の対象となっている人を守るためにも、本人の症状を軽減するためにも、認知症をよく理解している専門医に相談することが重要です。

 

 

 

 

4.日常生活に支障が出てくる行動障害

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自分のことや周囲で起こっている事が正しく把握できなくなると、行動がちぐはぐになり、日常生活にも支障が出てきます。

 

 

「徘徊」は原因を考えて対応する

(徘徊を例に原因を探ってみますが、原因を考えれば対応策もでてきます。)

 

・図書館で数時間過ごすのが日課のAさん。ある冬の日、いつもより2時間遅く出かけたため、暗くなった帰り道、道に迷い夜遅く疲れ果てた姿で自宅に戻ってきた。

場所の見当識障害が原因です。昼間、風景が見えれば大丈夫なので明るいうちに帰れるように工夫すれば1人で活動出来ます。

 

 

 

・Bさんは、日曜日の朝、通っている教会に行こうと自宅を出たが、迷子になり、昼過ぎとぼとぼと家に戻った。

見当識障害が進んでいますので、送り迎えをすることを考えましょう。

 

 

 

・Cさんは、夕方になると、遠くの故郷に帰るといってたびたび家を出ていこうとするが、ある日、介護者が目を離した隙に出て行き、行方不明となり、翌日、思いがけない場所で保護された。

Cさんの症状は、脳の活性が徐々に下がってくる夕方に、場所や時間の見当識障害が深まることがあります。昼寝などで夕方の意識をはっきりさせ、場合によっては薬を使います。

 

 

 

 

・Dさんは、妻の買い物の途中、行方不明となった。2日後に遠く離れた町で保護された。

常に誰かの見守りが必要になります。介護の支援を考えましょう。

 

 

 

・Eさんは、家の中でも外でも、じっとしていないで歩き続ける。人や物を押しのけ、突き飛ばしてとにかく歩く。

常に誰かの見守りが必要で、介護の支援が必要です。薬物療法が有効な場所もあります。

 

 

 

 

 

 

まとめ

 

読んで頂いた通り、認知症の方の行動パターンや心理症状は様々です。

そして長い付き合いになる事が多いと思いますので、しっかり理解して、介護する側もストレスをあまり受けずに済むように心がけましょう。

 

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今日は以上。